夏の忘れもの

冬になり、葉が落ちて寂しくなった森の中。
それまで見えていなかったものが、いろいろと目に留まるようになります。
夏の間からあったはずなのに、茂った葉に隠されて、見つからなかったのです。

木の枝に掛けられた鳥の巣も、そんなもののひとつです。

ヒヨドリ古巣
ヒヨドリの古巣

このヒヨドリの巣は、実はピッキオビジターセンタ-のすぐ裏手にあったものです。
夏休み中、ここでヒナを育てていたのを、静かに見守っていました。

ヒヨドリ巣
巣立ち直前のヒナ達(8月13日撮影)

ヒナが成長して巣立ち、巣は使われなくなったのですが、
それ以来、私もすっかり巣の存在を忘れていたのです。

数日前、巣の横を通りかかった際にふと見ると、
巣はそのままの姿で残っていました。

家主が判明している古巣は貴重です。
雪が積もって壊れてしまう前に、標本として採集する事にしました。

ヒヨドリ古巣2
採集したヒヨドリの古巣

巣の外壁は、シラカバの皮と細い草の茎が使われています。
その内側には、かんなくずのようなオニヒョウタンボクの皮。
そして内装は、なんだか判らない細い植物質のものが使われていました。

ヒヨドリの親鳥は、森の中からこれら複数の材料を集め、
用途に合わせて使い分けながら、
上手に編み込んで巣を作っている事が判ります。

さらに中を覗き込むと、大変なものが残されていました。

ヒヨドリ古巣3
古巣の中

なんと、また伸びきらない風切羽と、二の腕でしょうか? 長細い骨が・・・
ヒナのうちの1羽は、巣立つ事ができず、巣の底で死んでいたのでした。

上の2枚目の写真では、3羽のヒナが確認できます。
このうちの1羽なのでしょうか?
それとも、この時すでに、巣の底で死んでいるヒナがいたのでしょうか・・・

さらに、興味深いものを見つけました。

ヒヨドリ古巣4
ヒナの「胃内容物」?

巣の隅、風切羽の向きからするとヒナのお腹にあたる部分、
植物の種子と、緑色をした甲虫の破片が、ひとかたまりになっています。
ヒヨドリは、木の実も虫も食べる雑食性。
これはヒナの胃内容物でしょうか?

ちなみに中央左が甲虫の頭部、左が鞘翅(前ばね)、
夏にビジターセンター周辺によく落ちていた「スジコガネ」だと思います。

スジコガネの成虫は、針葉樹の葉を食べます。
ビジターセンターの周辺には、モミやカラマツが生えているので、
それらの葉を食べていたのでしょう。
実際、夏休みには、ネイチャーウォッチングの受付中に、
ホオジロがスジコガネを捕まえるシーンを目撃しました。
より大きなヒヨドリなら、十分にエサにする事ができるでしょう。

ヒヨドリの親鳥は、かわいい自分のヒナに、
そのとっておきの緑にピカピカ光るごちそうを与えたのでしょう。
しかしヒナは死んでしまいました。
理由は判りません。

他のヒナが巣立った後、ヒナの死骸は専門の処理業者、
シデムシやハネカクシ、ハエのウジなどに食べられたのでしょう。
肉や内蔵などのやわらかい部分が綺麗に無くなっている事から、そう予想できます。

しかし、彼らの手に余る部位、羽毛や骨格、種子、
そしてスジコガネの硬い外骨格は、巣の中に残されたのだと思います。

こんな小さな古巣の中に、様々な生き物のドラマが詰め込まれていました。

大塚
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軽井沢野鳥の森を毎日ガイドしているピッキオが、野鳥の森の季節の自然情報や、日々のネイチャーウォッチングなどで出会った生き物についてご紹介します。
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